「春歌ちゃん……」
突然春歌の元を訪れたのは、白雪だった。
話を聞くに、最近白雪の料理を食べる兄の箸が重くなったという。
それ以外に白雪に対して態度の変化があったわけではなく、
他の妹達に聞いてみても、特に兄に変わった様子はないという。
……そうなれば考えられるのは、
自分の料理に原因があると認めざるを得ず、
そういった方面が出来る春歌に相談を持ちかけた……という事だ。
「白雪ちゃん……ここ一週間、どんな料理を兄君さまに作っていたのか、
教えて頂けますか?」
最近になって極端に白雪の料理の腕が落ちたり、
兄の好みが変わったとは思えず、春歌は尋ねてみた。
「これがここ一週間分のレシピですの」
……と受け取ったレシピには、
一ひねりも二ひねりもアイディアを盛り込んだ創作料理ばかり。
そりゃあ、フレンチのフルコースや満漢全席など食べてはみたいが、
さすがにそれが毎日だと嫌気が差すだろう……という理屈だ。
それをどう彼女を傷つけずに伝えるか、春歌は悩んだが、
やはりここは姉貴分として、実直な意見を述べるべきだと悟った。
「白雪ちゃんのお料理は……手が凝りすぎていて、
きっと兄君さまの胃に負担がかかっていると思うんですよ。
……ここは一つ、シンプルなお料理にチャレンジされてはいかがでしょうか?」
春歌が白雪と作った今日の晩ご飯は、筍ご飯とお吸い物。
「春歌ちゃん……ありがとうですの。
春歌ちゃんと一緒にお料理をしていて、姫、とっても勉強になったのですの」
毎日食べるのだからこそシンプルでもいい。
でも飽きられない工夫をし続けねば。
その後の白雪のレシピが、当分和食が続いた事を春歌が知るのは、
それからずいぶん先の話。