音楽室の隣にある音楽準備室。
様々な楽器が所狭しと納められているこの部屋こそ、
彼女が学園から与えられた、いわば「教官室」である。
職員会議や授業を受け持っている以外は、
彼女はずっとこの部屋で一日を過ごすことになるので、
パーテーションで区切られた窓際の一角には、
彼女専用のロッカーや事務机、電話やPCが置かれている。
「ふぅ……」
彼女のため息の理由は2つ。
無惨にも真っ二つに割られたBeatlesのレコードと、
ご丁寧にもフリルをおごった白いネコミミカチューシャ。
割られたレコードについては、
まぁ、生徒に悪意があってやった事ではないのに、
それを責めるのは大人げない。
週末の休日に、レコード店で同じモノを探してみるとして、
むしろ問題は……ネコミミだ。
「きっと、フリルをつけるアイディアは逢ちゃん、縫製は花雪ちゃんね……」
素人目にもシッカリ作られたスペシャルメイド。
ラッピングに添えらていたカードに、
踊るように書かれている生徒たちの寄せ書きからも、
生徒達が彼女に寄せる想いは伝わってくる。
しかしながら……彼女はそんな生徒達の真意を分かりかねていた。
良くも悪くも温室育ちゆえに、軽いジョークさえ真に受けてしまう、
と言ったところだろうか。
「似合……っているの、かな?」
鏡に映る、違う自分。
白いフリル付きネコミミと黒髪のコントラストは、
彼女の美貌をよりいっそう引き立たせた。
「ふふふ……良いかも知れないわね」
ネコミミをつけた鏡の中の彼女は、
教師という責任ある職務に就く女性から無垢な少女へと変わっていた。
とんとん!
……しかし、それはノックの音で打ち破られた。
「はーい」
彼女はネコミミを外し、事務机の引き出しにそっとしまった。
「失礼します」
音楽準備室に入る生徒の前に立つ彼女は、
いつもの『れのんせんせい』に戻っていた。
【終】
・:*:・°’★、。・:*:・°’☆
「わたくしりつねおしすがくえん」ネタで。
ウチの麗音は音楽教師役ゆえ、制服も着られないし、
座席表に名前が載ることもない。
さらにweb拍手に寄せられたメッセージが、自分が送った「test」のみ
…………と、さみしかったので、ついかっとなって書いてしまいました。
今では反省して(以下略
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